2015年3月13日発行

【税理士・道下知子の税金相談室】⑤〜節税のポイントはいたるところに

精神障害者福祉手帳一例/Wikipediaより

【3月13日、mulan=東京】


■認定基準は市町村によってまちまち


前回記事では、障害者控除について、ふれる前段階として、障害者と特別障害者の範囲を分けました。

障害者のうち、③の「65歳以上の方で障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方」ですが、介護保険法の「要介護」認定を受ければ、障害者控除が適用できると勘違いするケースが多いようです。

障害者控除を適用するには、「要介護認定」とは別に、市町村長等から、“障害者に準ずるもの”として認定を受ける必要があります。この認定基準は、市町村によってまちまちです。

ただし、多くの市町村では、①要介護に認定され、②主治医意見書等に記載の障害自立度等が一定以上、という基準としているようです。

税法は難しいですね。専門にしているわたしも、時々わけがわからなくなります。それはそれとして、上記のしぼった論点について、その手続きをまとめましょう。

① 「要介護認定」を受けていても、別途市町村に申請をして、所得税法上の「“障害者に準ずるもの”としての認定」を受けなければならない、②市町村に認定され、障害者控除を適用するときには、確定申告書に認定時に交付される「障害者控除対象者認定書」を添付する、ことが必要です。
また、違う論点ですが、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族が障害者である場合は、障害者控除を適用することができますので、ご留意ください。

なお、扶養親族や控除対象配偶者が障害者の場合、「扶養控除」や「配偶者控除」と、「障害者控除」は別の制度ですから、並列して適用することができますので、活用できるものは、おおいに活用しましょう。


■医療費控除の対象者に要注意!


「医療費控除なら、確定申告したことあるし、この控除だけはよく知ってますよ」----という方。医療費控除のポイントは、納税者が本人、生計を一にする配偶者、生計を一にする親族のために支払った医療費が対象となることです。

「うちは、夫婦共稼ぎで、家計はどんぶり勘定。どちらのお財布から医療費を支払ったのか、きちんとわかってません」

このようなケースでは、それぞれが申告しても、どちらかがまとめて申告しても、問題ありません。ただし、それぞれが申告する場合には、それぞれの医療費から10万円を差し引くことになるため、対象となる医療費の金額が少なくなってしまいます。そこで、夫婦の所得税率を比較して、高い所得税率のほうにまとめて申告したほうが、夫婦間の所得税率の差額分、有利になります。

なお、通院のための交通費のうち、電車・バス代は対象となります。この点は、けっこう見落としがちなので、ご注意を。領収証がありませんので、一覧表に、年月日・医療機関名・区間・料金を記載して、提出するといいでしょう。なお、タクシー代は、歩行困難な場合であれば、対象となります。

その他注意点としては、介護保険の大半のサービス料は対象となりますので、生計を一にする配偶者や親族が介護保険のサービスをうけている場合には、対象となるか否か、きちんとチェックしておきましょう。


■寡婦控除も要チェックの事案です!


夫や妻を亡くしたり、離婚したり、生死不明になっている、寡婦や寡夫が対象です。死別または離婚したら、まずこの所得控除を検討してみてください。

寡婦(寡夫)控除の規定は、すこし複雑になっていますが、規定にそって一つ一つ検討していけば、むずかしいことはありません。

<寡婦控除(女性)>
(1) 夫と死別や離婚後、再婚していない、または夫の生死が不明
① 扶養親族、または生計を一にしていて、総所得金額が38万円以下の子供がいる場合
・・・控除額は27万円(所得要件なし)
② 扶養親族である子供がいて、本人の合計所得金額が500万円以下の場合
・・・控除額は35万円
(2) 夫と死別後、再婚していない、または夫の生死が不明で、本人の合計所得金額が500万円以下の場合
・・・控除額は27万円

<寡夫控除(男性)>
妻と死別や離婚後、再婚していない、または妻の生死が不明
+ 生計を一にしていて、総所得金額が38万円以下の子供がいる
+ 本人の合計所得金額が500万円以下の場合
・・・控除額は27万円


■結婚歴の有無で所得税に差が生じる?


「わたしは離婚経験があるけれども、子供はいません。実家で、わずかな年金暮らしの母親と同居しています」

このケースを検討すると、母親は、扶養親族に該当し、わたしの所得要件はないため、27万円の寡婦控除が適用できます。

ポイントは、「結婚歴があるか否か」のため、いわゆる未婚のシングルマザーには、寡婦控除を適用することはできません。結婚歴の有無のみで、所得税などに差が生じるのが、社会的に公正なのか否か、現在、議論がされているようですが、なかなか深まっていかないようです。

さまざまな家族形態が増える中で、これから、少しずつ、未婚のシングルマザーについても、制度的な配慮が施される時代になってもいいのではないかな、と思います。


■過年度に納めすぎた税金があるかどうかの確認もこの際してみましょう!


数年前から扶養親族が要介護者で、障害者控除を適用できたのに、知らずに適用しなかった、数年前の医療費の書類が見つかった、など、過年度に納めるべき税金を多く申告していた場合は、「更正の請求」という手続きで、申告後5年以内であれば税金を取り戻すことができます。

ここまで読んだ、みなさん。今年だけでなく、過年度の分について見直してみるのも、節税につながりそうですね。


■節税のポイントはいたるところに


以上、かけ足でしたが、「所得控除」のうち、みなさんに身近であるけれど、見落としがちなものについて、ポイントをしぼって、ちょっとした例も入れながら、ご説明しました。

先ほどもお伝えしたように、税法は、わたしたちが納める税金を計算する方法を、法律で規定しているため、まちがいのないように、複雑化したものになっています。本稿は、こうした規定のざっくりとした説明で、つかえる税金の制度のうち、時間的制約から、キーポイントの「所得控除」のみをお伝えしている状況です(みなさんにお伝えしたいことは、たくさんあるのです)。

ですから、今回確定申告をしよう!と思っているみなさん。実際に適用するにあたっては、きちんと詳細を確認して、間違いのないように、あるべき税金を計算して、節税につなげてください。

むずかしそうだけど、節税できるのなら----まずは頑張って検討し、適用してみれば、もう、こっちのものです。上手く節税して、みなさんのライフサイクルを一層素敵なものにしてくださいね。【了】


道下知子(どうげ・ともこ)
東京都出身。青山学院大学法学部私法学科卒業、同大学院法学研究科私法専攻博士前期課程修了。新日本アーンストアンドヤング税理士法人にて、税理士として十数年、様々な業界の中小企業を中心に、その会計・財務・税務分野に従事。その後、現在は、西武文理大学専任講師。税理士。日本簿記学会、税務会計研究学会に所属。


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