2015年3月12日発行

【税理士・道下知子の税金相談室】④〜使える所得控除、見逃しているものはありませんか?

道下知子氏

【3月12日、mulan=東京】


■確定申告の期限迫る!


いよいよ、確定申告の期限がせまってきました。

フリーランスの方は、申告作業で追われているかもしれません。かたや、サラリーマンの方、年末調整でまだ調整していないものについて、税金を安くすることができる制度を(知らずに)見逃したまま、「わたしとは無関係・・・」と、のんびり過ごしていませんか?

前回は、つかえる税金の制度のうち、重要なキーとなる「所得控除」という制度を、おおまかにご説明しました。かたーい漢字が続く制度についての、かるーい説明でしたから、なかなかピンとこない方もいらっしゃったかもしれません。

税法は、わたしたちが納める税金を計算する方法を定めているので、厳格で、こまかく、複雑なのです。おおざっぱな規定では、誤りが多発するので、仕方ないのでしょう。

さて、今回は、確定申告時期のラストバージョンとして、「所得控除」のうち、みなさんに身近であるけれど、見落としがちなものについて、なるべくわかりやすくご説明していきます。


■扶養控除は「同居」は必須ではない!


扶養控除のポイントは、①配偶者以外の親族(6親等内血族、3親等内姻族)であること、②生計を一にしている、③対象者の合計所得金額が38万円以下、④青色申告者の事業専従者、または白色申告者の事業専従者でないこと----です。

控除できる金額は、原則38万円ですが、年齢や居住状況に応じて、それぞれだということは前述しました。

ここで鍵となるのが、「生計を一にする」という用語です。これは、一緒に住んでいなくても、対象に含めることができます。勤務、学校、療養などの都合で別居していても、生活費を仕送りしているなどの実態があれば「生計を一にする」ものとして取り扱うことができるのです。

ただし、世間一般では、「扶養控除」の「扶養」の意味を「毎日の生活全般につき、お世話している」と解釈し、そもそも「扶養していない」と決めつけているケースが、とても多いのです。

「遠く離れた地方で、わたしの母は少ない年金でほそぼそと暮らしています。わたしは、定期的に送金しています」

「わたしの場合は、定期的に年に何度か母のもとに訪れて、お小遣いを渡すぐらいの支援です」

このくらいなら、「扶養」しているとはいえないから、扶養控除の対象とはならないのではと思われがちですが、とんでもない。

仕送りなど、定期的な支援をして、母親の合計所得金額(公的年金受給者なら、年金収入から公的年金等控除額を引いた金額)が38万円以下であれば、扶養親族として、控除することができます。

なおかつ、「70歳以上の別居」であれば、48万円の所得控除を受けることができます。また、「70歳以上の同居」であれば、58万円を控除できるのです。

また、共働きで扶養控除の対象となる子供(現在、16未満の子供は対象となりません)がいる場合は、その子の生活費を負担している方が、扶養控除を受けることになりますが、「どんぶり勘定」のご家庭が多いですよね。

そのときは、夫婦の所得税率を比較して、高い所得税率のほうの扶養控除にしたほうが、夫婦間の所得税率の差額分が、有利になるのです。


■介護保険法の「要介護(要支援)者」に注目しよう


障害者控除----本人や配偶者・扶養親族(配偶者控除や扶養控除を受ける人に限る)が、障害者や特別障害者である場合には、1人につき、障害者なら27万円、特別障害者なら40万円(同居している特別障害者なら75万円)を障害者控除として、控除することができます。


ここでのポイントは、障害者と特別障害者の範囲の理解です。分けてみましたので、参考にしてみてください。

<障害者>

① 身体障害者手帳や戦傷病者手帳、精神障碍者保健福祉手帳の発行を受けている方

② 精神保健指定医などにより知的障害者と判定された方

③ 65歳以上の方で障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている方 など

<特別障害者>

障害者のうち、次の特に重度の障害がある方

① 身体障害者手帳に身体上の障害の程度が一級または二級と記載されている方

② 精神障害者保健福祉手帳に障害等級が一級と記載されている方

③ 重度の知的障害者と判定された方

④ いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければならない方 など

<同居特別障害者>

特別障害者である控除対象配偶者や扶養親族で、本人や配偶者、生計を一にする親族のどなたかとの同居を常としている方

この「障害者控除」については、介護保険法の要介護・要支援の方が増える一方で、障害者控除が適用できるのに、「控除せずに見過している方」が、とても多いようです。なぜでしょう。

所得税法上の障害者や特別障害者の範囲と、介護保険で要介護者や要支援者の範囲が合致しているわけでないので、判定が難しいため、よくわからない制度になってしまったということがあります。そのため、見過しがちにされているのです。

次稿では、見過しがちな論点にポイントをしぼって、みていきます。【了】


道下知子(どうげ・ともこ)
東京都出身。青山学院大学法学部私法学科卒業、同大学院法学研究科私法専攻博士前期課程修了。新日本アーンストアンドヤング税理士法人にて、税理士として十数年、様々な業界の中小企業を中心に、その会計・財務・税務分野に従事。その後、現在は、西武文理大学専任講師。税理士。日本簿記学会、税務会計研究学会に所属。


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