2016年10月11日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】㉑〜ベルギー王室事情

本日から14日までフィリップ王国国王陛下が王妃陛下と国賓として来日

【10月11日、mulan=ブリュッセル】


 正式名称はベルギー王国ですから、もちろん、ベルギーには王室があります。チョコレートを始め王室御用達が多いのも特徴です。

 現在のフィリップ国王は1960年生まれで、2013年7月21日の独立記念日に第7代ベルギー国王として即位されました。これは、前国王であるアルベール2世が退位を決定されたため。フィリップ国王は前国王の長男で、1999年にマチルド王妃とご結婚され、エリザベス王女、ガブリエル王子、エマヌエル王子、エレオノレ王女の4子がいらっしゃいます。エリザベス王女は次期王位継承者です。1991年の憲法改正で、レオポルド1世以来の男系男子継承を廃止し、女子にも王位継承権を認められています。

 ベルギーの王室の歴史は、日本の皇室にように125代、代々続くというほどの長いものではありません。そもそも、1830年にオランダから独立した若い国であるベルギーは、独立時に外から初代国王を迎えました。1831年7月21日にレオポルド1世が初代ベルギー国王として即位。もともとドイツの地方貴族出身で、フランス出身のルイーズ・マリー王妃と結婚。第2代はレオポルド1世の長男にあたるレオポルド2世で、オーストリア出身のマリー・アンリエット王女と結婚。第3代のアルベール1世はレオポルド2世の弟君で、エリザベート王妃と結婚。

 エリザベート王妃は、「シシィ」の愛称で呼ばれ、日本でもミュージカルになっているので有名なエリザベート・オーストリア皇后の姪にあたり、バイエルン王国出身の父にポルトガル出身の母なので、ドイツとのつながりが強い王妃でした。第4代はアルベール1世の長男にあたるレオポルド3世ですが、最初にスウェーデン出身のアストリッド王妃と結婚。アストリッド王妃が自動車事故で亡くなった後、両親はベルギー出身であるもののイギリス生まれのリリアン・バエルと身分を超えて結ばれています。

 第5代は、レオポルド3世の次男であるボードワン1世。ボードワン1世は誠実、気さくなお人柄で尊敬を集め、特に国民からの人気が高く、男の子にボードワンと名付けることが流行したそうです。スペイン出身のファビオラ王妃と結婚しましたが、子どもがいなかったため、弟君のアルベール2世が第6代として後を継ぎました。パオラ前王妃はイタリア出身。そして、現国王であるフィリップ国王に引き継がれているというわけです。

 7代なのにこの複雑さ。お気づきかと思いますが、実はベルギー王室、王妃の出身はことごとくベルギー国外。マチルド王妃は、ベルギー王室史上初めてのベルギー生まれの王妃なのです。日本人の感覚だと、ベルギー王室=「ベルギー人」なのかと思いきや、驚きの系図といえるかもしれません。ヨーロッパの各王室はみなつながっているので、ベルギー人にとっては大して不思議なことでもないのかもしれませんが。

 現在のベルギー王室は、フレンドリーな印象で、ベルギー国民からも親しみをもって尊敬されています。女性としては、マチルド王妃のファッションも気になるところ。Natanというベルギーのブランドも好んで着ていらっしゃるのだそうです。脚がすらっと細く長い長身で素敵に自国デザイナーのワンピースを着こなされて、女性の起業などを積極的に支援されるマチルド王妃。人気の理由もよくわかります。

 特に現在のフィリップ国王は日本との関係も深く、皇太子時代の2002年にマチルド王妃とワールドカップの日・ベルギー戦観戦のため、2005年は経済ミッションを率いて愛・地球博訪問、さらに、2012年にはマチルド王妃とともに約300名のビジネスマン等を引き連れた経済ミッションで日本を公式訪問されています。日本からも、1999年のフィリップ国王王妃両陛下の結婚式に皇太子同妃両殿下がご出席される等、活発な皇室・王室の交流があり、二国間の友好関係の象徴ともいえます。

 王室といえば雲の上の別世界のお話で、普段は王室御用達のチョコレートをいただく程度ですが、調べてみるとベルギー王室、なかなかおもしろく、興味と親しみがわいてきました。【了】

※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。


栗原恵津子(くりはら・えつこ)
1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

今年は日本とベルギー友好150周年。ひな人形も王宮内の目立つ場所に

公開期間には、ベルギー王宮内は一般人にも開かれるそう

フィリップ国王は国民に人気が高く、親日家でもある


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