2016年8月26日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】⑳〜意外なほどの武道人気

筆者も参加したブリュッセルの合気道セミナー

【8月26日、mulan=ブリュッセル】


リオ・オリンピックが開幕されたところで、メダルの数が気になる日々だったかと思います。

ベルギーは、1900年のパリ・オリンピックからオリンピックに参加、これまで一度だけ、1920年に開催国になっています。1920年のアントワープ・オリンピックでは、ベルギーとして最多の36個のメダルを獲得しています。ただ、第一世界大戦直後といえる時期に開催されたアントワープ・オリンピックの参加国は、日本も含め29カ国。かなりこじんまりしたものだったことは容易に想像できます。

いずれにしても、この36個という輝かしい記録は以降まったく更新されず、1924年のパリ・オリンピックでの13個を除くと、メダルの獲得数はほぼ毎回片手で数えられる範囲。冬期オリンピックでは最多が2個、ほとんどがゼロなので、前回の冬期オリンピックのときに当地でほとんどオリンピックが話題にのぼらず、ベルギーのテレビであまり放映されていなかったことにも納得がいきます。

アントワープ・オリンピックのメダルを競技別にみると、圧倒的なのは自転車の24個(金6個、銀8個、銅10個)。これまでのメダルも金メダルの多さではアーチェリーの11個がトップですが、総計ではやはり自転車がトップ。日本では、ツール・ド・フランスのほうが有名で、自転車といえば交通手段としてはオランダというイメージも強く、ベルギーが自転車王国であることはあまり知られていません。実は、ベルギーには自転車レースがいくつもあるそうで、自転車競技はベルギーの国技なのです。

メダル総計だけみると、自転車、アーチェリー(20個)に続いて、馬術(12個)、陸上(11個)、柔道(11個)、フェンシング(10個)となります。ここで注目したいのは、上位5種目に柔道がはいっていることです。

ベルギーで感じるのは、意外なほどの武道の人気の高さです。

柔道については、蘭語圏柔道連盟と仏語圏柔道連盟が存在して、約28,500人(蘭語圏:約17,000人、仏語圏:約11,500人)が連盟に所属しているそうです。ベルギー国内には420を超える道場があるというのですから驚きです。柔道に次いで、約16,000人規模、同数程度の道場があるのが空手、規模はだいぶ小さくなりますが、合気道(約3,400人)も活発に活動しています。

ベルギーには、日本の伝統文化や古典的な「道」の精神性に強く惹かれる層が根強くいるようです。武道をやっているベルギー人に、なぜ武道を始めたのかと質問すると、近所に道場があった、偶然知る機会があり、親にぜひやらせてほしいと頼んで始めた、という答えが結構返ってきます。親兄弟の影響というよりも、自分自身の選択として武道をたしなんでいる人が多い気がします。身近な環境に日本や日本文化があったというよりも、武道をきっかけに、日本という国そのものヘの関心を高めるというケースが多いようです。

私自身、日本にいるときよりも、むしろベルギーで武道に触れる機会が圧倒的に多く、日本文化の理解者が多いことを喜ぶ半面、自分自身が体験していなかったり知識が不十分だったりすることに反省しきりです。

ベルギーとオリンピック、といえば、昨年、ベルギー人デザイナーが東京オリンピックの旧エンブレムの使用差し止めを求めて話題になりました。インターネットで「ベルギー」「オリンピック」というキーワード検索ではこの件ばかりがヒットするのは寂しいので、今回のリオでも、また、2020年の東京でも、ベルギー人選手の活躍を日本人選手の活躍とともに応援したいと思います。【了】


※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。


栗原恵津子(くりはら・えつこ)
1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

柔道協会のプレスコンファレンス


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