2016年7月11日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】⑲〜雨の日の結婚式は幸運の印

衣装とレース博物館に展示されている妊婦さん用ドレス(左)と1957年ビンテージのウェディングドレス/撮影 筆者

【7月11日、mulan=ブリュッセル】

 「Mariage pluvieux mariage heureux!」

 ある寒い雨の日、ベルギーではじめて教会での結婚式に参列した日、友人から教わった言葉です。「雨の日の結婚式は幸運をもたらす。」日本の諺でいうところの「雨降って地固まる」ということなのか、雨が多いベルギーだからこそなのか、結婚式に雨が降るというのは、天から神様の祝福が降ってきているのだから縁起が良い、というフランス語の言い回しだそうです。

 ベルギーはカトリック教徒が80-90%といわれていますが、現在は、教会で結婚式を挙げる人は減ってきているそうです。感覚としては50年ぐらい前、1960年頃から比較すると1/3程度ではないか、とのこと。正確な統計によるものではありませんが、日本人の大半にとって、「葬式仏教」になってしまっているように、ベルギーでも結婚式すら教会離れが進み、同様な傾向が見られるということのようです。

 実際、統計を調べてみると、ベルギーでは、1960年には1000人あたり7.1人が結婚していたのが、2012年には3.8人となっており(出典:eurostat)、結婚そのものの数が半減しているので、教会式がさらに減少しているというのにも納得がいきます。

 ベルギーでの従来の結婚式というのは、まずは役所での民事婚(=籍を入れる)、続いて教会での結婚式、その後、郊外のお城やレストランでの披露宴というのが典型で、本来は1日がかりの大イベントになるそうです。やはりいい季節の週末に行うのが人気だそうです。残念ながら、この、これぞ結婚式、というものに招待されたことがないのですが、先日、市庁舎での結婚式に参列する機会がありました。


■ベルギーでの伝統婚は、1日がかりのイベント


 日本では婚姻届を役所に提出するだけで本当に事務的ですが、ベルギーでは歴史ある荘厳で華やかな雰囲気の建物内で行われるうえに、簡単なセレモニーがあります。ブリュッセルでは、グランプラスにある市庁舎の「結婚の間」で、市長または助役がセレモニーを執り行います。所要時間は20-30分なのですが、結婚の間への新郎新婦及び親族、ゲストの入場からはじまり、市長または助役による新郎新婦の本人紹介(実際は本人確認というべきものかもしれませんが。)、結婚生活についての訓辞的なスピーチ、指輪の交換、結婚の証人による記録簿へのサイン、音楽とともに新郎新婦退場、まであるので、教会式から宗教色を抜いた簡略版セレモニー、といった感じです。

 市庁舎で結婚式が行える日時が限られているので、特に良い季節の土曜午後はかなり先まで予約でいっぱいなのだそうです。いずれにしても、次々と式が行われるので、順番待ちになります。控えの間になる「ゴシックの間」に次のグループが控えているのを見ると、ちょっと日本のホテルや結婚式場の風景を思い起こします。市庁舎でのセレモニーでもそれなりの雰囲気が味わえるので、キリスト教徒でなければもちろんですが、敬虔な信者でない限り教会式はいいかな、と思う気持ちも十分理解できます。ちなみに、日本のように単に書類を提出するだけではないので、市庁舎での結婚式にも手数料というのか料金が設定されているそうです。


■市庁舎での結婚式が人気


 ブリュッセル市庁舎での結婚式は人気ですが、有料といってもブリュッセル市内でも決まった地域に在住していなければ申し込むことはできません。市庁舎入場時に、新郎新婦や証人が身分証明書の提出を求められたり、最初に二人の生年月日や住所の読み上げがあったり、carnet de mariageという結婚記録の手帳が渡されたりするところで、行政的な手続きであることを感じました。

 以前、仕事でブルージュ市庁舎を訪問して市の関係者と打ち合わせを行ったときに、20年前ぐらいだったか、平均して毎週3日、ブルージュ市庁舎で日本人の結婚式が行われていた時期があるという話がでました。最近はパラパラという程度らしいですが、ブリュッセルと異なり、ブルージュ市庁舎での結婚式については、現在でもベルギー観光局ワロン・ブリュッセルのページに、いわゆる海外ウェディングのパッケージが紹介されています。

 ブルージュ市庁舎とモダーヴ城の2プランがあり、リムジンのお迎え、結婚式、記念品、写真撮影、レセプションなどまでパックになっていますので、これからご結婚をお考えの方、ぜひご参考に。【了】

※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。


栗原恵津子(くりはら・えつこ)
1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

元ミス・ベルギーで人気タレントの結婚式の衣装(2015年)。花婿の靴がスニーカーなのがポイント

故・ダイアナ妃が着用したためいきの出るドレス

ゴルチェの奇抜なデザインのドレス/撮影 すべて著者


栗原恵津子 ベルギー便り ライフ