2016年2月9日発行

東日本ガス判決要旨(下)

会社案内表紙/東日本ガスHPより

【2月9日、mulan=東京】

■事件の概要
原告らは、東日本ガスの完全子会社化において、ニチガスとの株式交換に反対し、買取請求をしたが、東日本ガスが価格決定の申立てをしなかったので、撤回した。原告らは、ニチガスの株若しくは東日本ガスの株の交付又は口頭弁論終結時におけるニチガス株若しくは東日本ガス株の対価の支払いを求めた。

■判決主文の概要
ニチガス株、東日本ガス株の交付は棄却
撤回時の株価+金銭請求時以降の利息を支払え
訴訟費用は四割が原告、六割が被告の負担。

■理由
返還請求については、昨日の記事参照

金銭債権の算定基準時について
株式買取請求を撤回した場合、撤回の時点において被告の株式の現物返還は困難であり、株主は金銭債権を取得することになる。そこで、撤回時を基準として、その時点における被告の株式の価格相当額を返還すべきである。

具体的には、本件株式交換において被告の株式一株につき日本瓦斯の株式が0.34株の割合で割り当てられているところ、この交換比率に特に不当と認めるべき事情も、他に考慮すべき事情も認められないことからすれば、本件においては、株式買取請求を撤回した辞典における日本瓦斯の市場株価を前期交換比率で算出した金額をもって代金相当額と定めるのが合理的である。

この点、原告らは、被告の一株あたりの純資産によるべきと主張するが、前記判示に照らし採用できない。

また、被告は、代金相当額は、本件株式交換によって生じるシナジーその他の企業価値の増加分が一切反映されていない市場価値すなわち、本件株式交換の好評前の価格〔いわゆるナカリセバ価格〕となるとし、本件株式交換の公表前3ヶ月平均の被告株式の市場価格は331円であるから、この価格が本件における株式買取請求に係る株式1株あたりの代金相当額になると主張する。
 しかし、株式買取請求を撤回したことが当該撤回を申し出た者において本件株式交換によって生じる企業価値増加分の分配を放棄したものと直ちに解することはできない。株式の原状回復義務に代えて返還されるべき当該株式の代金相当額の算定時期が当該撤回時である以上、当該撤回時における株式の客観的価値によるべきであり、当該撤回時における市場価値等、これをより直接的に認定することの困難な本件においては、適切に行われた本件株式交換を前提とした日本瓦斯の市場価値を踏まえた算定が合理的であると認定したものであって、これと見解を異にする被告の主張は採用できない。

なお、被告は、株式買取請求における「公正な価格」の基準日に関する最高裁決定〔平成23年4月19日〕を引用しつつ、本件株式交換後、日本瓦斯の株価が上昇しているところ、株式買取請求権の撤回によりそのような株価上昇の利益を享受させることは、株主の投機的行動を誘発することになり不当である旨指摘する。しかし、本件は、株式買取請求が撤回された場合に関するものであり、「公正な価格」を定める買取価格決定とは事案を異にするし、買取請求された株式会社は、法定の期間内に自ら価格決定の申立てができることにも鑑みれば、投機的行動の誘発の可能性も限定的であって、上記判断を左右するに至らない。

本件において、〔中略〕原告山口が撤回した平成26年5月23日の時点における日本瓦斯の市場価格の終値は1849円であるから、本件株式交換における交換比率を用いて換算すると、6万2688円〔34×1849円〕が受領すべき金銭となる。また、株式買取請求の撤回により発生する被告の代金相当額の返還債務は期限の定めのない債務になると解されることから、遅延損害金の起算日は、予備的請求3に係る平成27年2月13日付けの「訴えの変更申立書」が送達された日の翌日となる同月17日となる。【了】


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