2016年1月29日発行

【地方議会ニュース】愛知県で政活費返還判決

全国の自治体への影響はどうなる?

【1月29日、mulan=東京】


■ 名古屋高裁が愛知県議会の2009年分の政務調査費の一部返還を命ずる


愛知県議会の政務調査費(現政務活動費)の一部の使途が違法だとして、住民が2009年度分の返還を求めていた訴訟の控訴審で、名古屋高裁は24日、全額を返還するよう命じた。全面敗訴の県議会側は「とんでもない判決」と反発する一方、「他の自治体に影響する可能性がある」との声も出ている。今回の判決の意味するものとは。

訴えていたのは名古屋市民オンブズマン。2009年度に県議が支出した「事務所家賃」と「自動車リース料」は条例違反だとして、領収書が公開されていた3万円以上の支出すべての返還を求めていた。すでに返還された140万円を除くと対象額は8116万6125円。

報道によると、裁判長は「当時の地方自治法では、政調費を充てられる対象は『調査研究に必要な経費』に限定されている」と指摘。「調査活動に事務所、車が不可欠だと主張・立証しない限り、賃借料などに充てられないと推認される」と判断したという。


■「事務所家賃」、「自動車リース料」は政務調査費に当たらないと判断


ここで「当時の」と出てくるのは、2012年に地方自治法が、翌2013年に県の条例が改正されたからだ。改正前の名称は「政務調査費」で、交付目的は「議員の調査研究に資するため」だったが、名称を「政務活動費」に修正。交付目的も「議員の調査研究その他の活動に資するため」と拡大し、具体的な支出対象は各自治体の条例で定めることとした。

今回の訴訟の対象は改正前の支出であり、名古屋高裁は事務所家賃と自動車リース料は当時規定されていた「調査研究に必要な経費」にはあたらないと判断。政調費で事務所費や自動車リース料を賄う妥当性を主張した県会側の反論についても「どの程度、事務所や車を使わなければならなかったのか個別具体的に立証していない」と退けた。


■そもそも地方議員には議会内に「控室」(事務スペース)も用意されている。


確かに地方議員の事務所は、ほとんどがいわゆる「政治活動」のために使われているといっても過言ではない。議会活動に必要な調査研究のためには議会の中に「控室」(事務スペース)が用意されているし、事務所がなければ地元住民の声を聞けないということもない。その証拠に、有力な地方議員でも地元に事務所を構えていない人は少なくない。

「黒塗りの高級ハイヤーで調査研究」というのも有権者にはピンとこないだろう。自宅と議会の往復には別途交通費が支給されるはずだし、「車がなければ調査研究ができない」場面はかなり限られるはず。調査研究がゼロとは言わないが、政務調査費の充当は極めて限定的であるべきだろう。


■ 問題は、地方自治法改正後の政務活動費のあるべき姿。


問題は、法改正後の政務活動費はどうあるべきか、だ。

そもそも2012年の地方自治法改正は名古屋市や鹿児島県阿久根市で首長と議会の対立が深刻化したため、地方制度調査会が首長と議会のあり方を見直すべきだと答申したのがきっかけ。

政府は答申に基づいて改正案を提出したが、土壇場になって地方議員の意向を受けた自民党議員が修正で「政務調査費の使い勝手を良くする項目」を追加。民主党政権の終末期で国会が混乱する中、どさくさ紛れで成立してしまったという経緯がある。

具体的な支出対象は自治体で決めるという方向性は問題ないが、当時は法改正の流れと同じく「使途を拡大する」という風潮が全国的に広まった。愛知県も含めて深い議論のないまま対象が「事務所家賃」や「自動車リース料」などに拡大されていったのである。

昨年来、愛知県も含めてこれだけずさんな支出実態が明らかになった今だからこそ、政務活動費の支出対象についてももっと詳細な制度設計を詰めるべきではないだろうか。住民に疑念を持たれないよう、厳格な支出基準を定めるべきだろう。

例えば愛知県の「政務活動費マニュアル」には自動車リース料について「他の活動にも使用できる自動車の性格を踏まえ、按分による支出とし、適用する按分割合は、使用実績に応じたものとする」とあるが、これではどれだけ充当していいのかわかりにくい。按分の程度を各議員の「良心」に任せていたら、今後も度々訴訟が起こされるだろう。

「政治に経費は一切認めるな」という意見も、「何でも税金で賄え」という意見も、住民のためにはならない。本当に必要な経費だけを、どう効率的に支給するか。どう不正使用を防ぐか。丁寧な議論が求められている。(地方議会ニュース解説委員 山本洋一)【了】


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