2015年10月9日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】⑩〜石畳を7センチヒールを履いて歩くマダムから見えるファッション感

アントワープのモード博物館「MoMu」に展示されているデコラティブな靴。

【10月9日、mulan=東京】


■クリエイティブなデザイナーやアーティストを数多く輩出


ブリュッセルの街を歩いていて、おおっ、と思うほどのオシャレな方を見かけることは正直なところ少ないです。石畳で歩きにくいのに(もう何足の靴をダメにしたでしょうか)、たまに7cmヒールの女性をみかけると、だいたいにおいて、さすがにオシャレだと思うのですが、なぜか結構マダムが多いことにも驚きます。

マダムたちは優雅な車生活で歩く距離が短いということもあるのかもしれません。

パリやミラノに比べてブリュッセルのファッションは・・・と思う一方、時に個性的なファッションに出会うこともあり、また、特にアクセサリー類は素敵!と思って聞いてみると、地元アーティストの作品だったり、自作だったりします。

ベルギーという国、実は、クリエイティブなデザイナーやアーティストを数多く輩出しています。

日本でも人気のあるドリス・ヴァン・ノッテンはベルギーのファッション・デザイナー。

1980年代にファッション界に旋風を巻き起こしたAntwerp Six(アントワープ6人衆)の一人です。アントワープにある、ヨーロッパでも5本の指に入る歴史と伝統ある芸術アカデミー、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション科出身のデザイナー達で、彼らが古風なイメージだったアントワープをモードの街に変えたといわれています。

アントワープのデザインは前衛的で、全般に明るさや派手さはなく、暗いイメージが強いです。ベルギー人でデザインや服飾を勉強している学生に、「ベルギー人は地味ね」とコメントしたら、一般的には、あまり目立つのは好まず、確かに好まれる色彩はおさえたものが多いかもしれないといっていました。


■アカデミーの卒業作品で「金の卵」を探す


アントワープ王立芸術アカデミーには日本人の留学生も毎年入学しています。

ただ、実力がものをいう厳しい世界、入学できても卒業できないことが多いそうです。留年の制度はもちろんあり、1年生から2年生にあがるのに2年かけることはそれほど珍しくなく、2年生から3年生はさらに厳しく、そして、4年生となり卒業までできるのは、ごくわずか。

毎年6月に行われるファッション科全学生参加で行われるファッションショーは、4年生の卒業作品発表を兼ねているため、単なる学校の発表の場とは思えない盛り上がりと緊張感があります。未来の金の卵を探すファッション業界関係者やプレスによる取材も多く、そもそもチケットが一般販売されていることに驚きました。

アントワープには、「The」ファッション博物館の自負を持つモード博物館MoMuがあり、今年はドリス・ヴァン・ノッテン展を行っていました。残念ながら足を運びそびれてしまったのですが、同博物館史上最高の来場者数で展示を終了したそうです。現在は、靴をテーマにしたFOOTPRINTを開催中です。


■お洒落な女性市長は地元ブティックがお気に入り


ハッセルトにもモード博物館があり、こちらはベルギー人ではないですがポール・スミス展を開催していました。日本のメディア取材も入ったそうです。ハッセルト市長は女性ですが、いつも素敵なファッションで、いちど、お召しの鮮やかなオレンジのミニ丈の柄ワンピースをどちらのものですかと伺ったら、地元のお気に入りのブティックで購入されたとのこと。ハッセルトが、アントワープに負けじとファッションに力を入れているのを感じました。

ブリュッセルにも衣装とレースの博物館があり、ベルギー人のファッションへの関心は高いといえると思うのですが、一方、ブリュッセルの庶民的なショッピング通りにはファスト・ファッションの店が建ち並び、数ヶ月前にオープンしたPrimarkというお店の前に長蛇の列ができているのをみると、ブリュッセルの街中のファッション模様に納得できます。ちなみに、Primark、とても列に並ぶ気はせずいちども足を踏み入れていませんが、ショーウィンドーを見ると、とにかくお値段が安いことにびっくりしました。

この秋、ユニクロがベルギー1号店をアントワープにオープンしました。ファッションではやはり、アントワープに軍配があがったということなのでしょう。(文・撮影 栗原恵津子)【了】

※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。


栗原恵津子(くりはら・えつこ)
1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

同じく同博物館に展示されているRoyal Academy of Arts の学生の作品

マリリン・モンローの靴の木型も

Royal Academy Of Arts のファッション学科のショーで見つけた日本人学生の作品

ユニクロのベルギー1号店はアントワープにオープン


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