2015年7月9日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】⑥〜あらゆる口実を使う「お祭り民族」?

巨大な猫の人形パレード

【7月9日、mulan=東京】


■3年に1度開催される「猫祭り」


町中に猫があふれる一日----。

日本でも結構有名なようですが、イーペルという普段は静かな田舎の街で3年に1回、5月に開催される猫祭りがあります。短い駐在だとこの機会を逃してはと思い、有料観覧席のチケットもしっかりとおさえて行ってまいりました。

日本の旅行社が組んでいるツアーも少なくなく、日本人旅行者は目立っていて、ブリュッセルよりも日本人の割合が多いと感じるほどでした。

イーペルはかつて毛織物輸出で栄えた町でした。繊維業の敵はネズミ。このネズミ退治のために猫が保護されていたのが、猫の数が増えすぎて、ペストなどの脅威の原因という風説が広まったために繊維会館の塔の上から猫を放り投げたとか。あるいは、当時の迷信で、魔女と猫はよくセットになることから、魔女狩りとも関連するという話も。

そんな街の歴史を記憶にとどめるために始まった「猫祭り」ですが、イーペルは第一次世界大戦で激戦地となったところです。1938年に小さなパレードから始まったお祭りは、第一次大戦でいったん中断され、その後、街の再生を象徴するものとして市民に守られ、育てられ、今ではベルギーを代表する有名なお祭りの一つとなっています。

猫の仮装を中心とした市民と巨大な猫の人形のパレードに続くお祭りのハイライトは、鐘楼からの猫落とし。もちろん、今は本物の猫を投げることはなく、道化が猫のぬいぐるみを投げます。

サービスよく結構いくつも投げていましたが、なんといっても背の高い若い男性たちが真剣にぬいぐるみを狙って手を伸ばすので、相当よい位置をキープしない限りキャッチするのは困難です。このぬいぐるみ、運良く手に入れられたら幸せになれるそうです。さらに、魔女の火あぶりでお祭りは終わりを迎えます。


■全国各地でお祭りやフェスティバルが絶えない


ベルギーのカレンダーを見ると、全国各地でお祭りやフェスティバルが絶えず行われています。その数は何百ともいわれ、ベルギーで何らかのイベントがない時期を探すのは難しいとさえいわれています。

音楽、芸術、映画のフェスティバルから中世にさかのぼることができる歴史的、宗教的なものまで。主要なものだけに限っても、時期も地方も様々なのでなかなかおさえるのは大変そうです。猫祭りのように歴史とストーリーのあるお祭りは、昔の装束や独特な衣装、時にコスプレに近いような仮装をして練り歩くタイプと巨大な人形が行進するものが多いようです。

ベルギーの「三大祭り」や「五大祭り」はあるのか、とベルギー人に聞いてもなかなか同じ答えは得られなさそうです。猫祭りに加えて、独断で選ぶいくつかの代表的なお祭りとしては、地域のバリエーションも踏まえると、ユネスコの無形文化遺産に指定されているバンシュの「ジルのカーニバル」(2月)、スタブロで行われる「ブランムーシのカーニバル」(3月)、ブルージュの「聖血の行列」(5月)、ブリュッセルの「オメガング」(7月)あたりでしょうか。

このうち、オメガングを除くと今年は行きそびれてしまったのですが。これ以外にも、「死んだネズミの舞踏会」やら「エビ祭り」など、名前からして興味をそそられるお祭りがたくさんあります。

ベルギー人はありとあらゆる口実を使ってお祭りをしている、お祭り好きな国民ともいわれます。なぜ、これほどまでにお祭り好きなのでしょうか。

これは、余暇の過ごし方、楽しむことを意識した生活、地域との関わり方、凝り性な国民性、そんなところにつながってくるのかもしれません。【了】

※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。



1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

黒猫の姿をしたパフォーマーたち

パレードでは、華やかな「猫たち」が次々と

市民も熱狂


栗原恵津子 ベルギー便り 外交 政治・経済 マナー 猫祭り