2015年6月10日発行

【ベルギー便り しなやかで強かな女性外交力】⑤〜自由だからこその機微と複雑さ

街並み自体がRainbow Flagに/撮影・栗原恵津子

【6月10日、mulan=ブリュッセル】


■虹色の旗の意味は


店先にはためく虹色の旗──。

ご存じでしょうか。この旗の意味をはじめて知ったのはロンドンでした。もちろん、ベルギーでも見かけます。Rainbow flagまたはpride flagとも呼ばれるこの旗は、ゲイ、レズビアン、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の尊厳と社会運動を象徴するものです。

ブリュッセルの観光局の公式サイトにも「Welcome to Gay Brussels」というページがあります。自然や環境をテーマにしたエコツーリズム(ecotourism)やgreen tourismはだいぶ前から耳にしていましたが、最近では、人間ドックや診療等を目的とした medical tourismやhealth tourismに力をいれている国も増えてきています。広い意味でのsocial tourismが新たな観光政策の流れといえるかもしれません。

ブリュッセルでは、gay tourismをひとつのターゲットとしているそうです。ブリュッセルという都市の多様性、自由、寛容さ、そして、シュールレアリズムに象徴される芸術文化の成熟度などが、人それぞれ、様々な違いを個性として受け入れることができる土地柄といえるのでしょう。

国連の専門機関である世界観光機関(World Tourism Organization)でも、LGBTツーリズムに関する報告書が出されており、ベルギーは、ドイツ、ポルトガル、フランス、スペイン、ブラジルとともに、LGBT市場に関心が高い国として言及されています。

Prideというイベントも世界各国で行われているようですが、ブリュッセルでも華やかに毎年開催されています。今年は開催20周年という記念の年にあたるそうで、3日間の「BePride」イベントを含めPrideフェスティバルは2週間以上続き、最終日には繁華街近くの道路を閉鎖して、なんと消防車まで使ってのプライド・パレードで盛り上がっていました。

さすが、ブリュッセル市観光局や交通局がスポンサーになっているだけあります。


■2003年に同性婚を合法化


ベルギーは、欧州諸国の中でも、オランダに次いで2番目、2003年に同性婚を合法化しています。これまでの赴任地や東京以上にベルギーで同性のカップルに出会うのは当然、といえます。

異性の場合と同様、同性同士の国際カップルが多いのもブリュッセルの特徴です。

仕事でもプライベートでもお知り合いになるのは男性同士のケースばかりなのですが、husbandとwifeといった役割分担があるのは少し古い考え方だそうで、若い世代ではどちらもhusbandと呼び合うのが一般的なのだそうです。

ベルギーではそもそも事実婚が多く、夫婦別姓が普通であるため、まずはpartnerという言葉を使うのが常に無難である、という結論に達しました。パートナーが同性であれ異性であれ、それはよいのですが、先日男性同士のカップルが代理母に依頼して出産、しかも双子の女の子がいる、という話を聞いて、さすがに驚きました。その子どもたちの立場になると複雑な心境になります。

以前、ベルギーの学校では、親の職業は個人情報となり、プライバシー侵害になるので聞くことはできないと先生から伺ったことがあります。そのうち、親の性別を尋ねることもできないということになるのでしょうか・・・・・・。

何とも自由でおおらかな国ではありますが、自由だからこその機微と複雑さ、といえるような気がします。【了】

※筆者の個人的な見解で、所属する組織の公式見解ではありません。


栗原恵津子(くりはら・えつこ)
1995年慶應義塾大学法学部法律学科卒業、外務省入省。1996-1998年、英国ケンブリッジ大学留学、その後、英国、ブルネイでの在外勤務を経験。東京ではアフリカ、西欧、経済連携協定、ユネスコなどを担当する部署で勤務。2014年1月にベルギーに赴任、広報文化全般を担当。

レインボーカラーに変化したグランプラス


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